これは、よくお伺いする質問です。 急性期、回復期、慢性期などのリハビリテーションの区分に関係なく患者さんの音声言語の状態の推移を細かく観察し記録して行くことが治療において重要だと考えます。
例えば、急性期のリハビリテーションにおいては、発症直後にディアドコ検査(パタカ検査)や構音検査を実施されている病院が多いと思います。 急性期の病院では入院から退院までが2≠R週間程度と短く、症状の変化も大きいと思います。
退院直前には大幅に改善していると思いますが、発症直後に行った同じ検査を実施し、発症直後と比較することには意味があります。 今までは、聴覚的な印象までにとどまっていた観察を、音響分析を実施することでより客観的に比較することができます。構音の状態はもちろんのこと、開鼻声、喉頭雑音成分の有無などスペクトログラムを視察することで明確に指摘できる点があるかと思います。
回復期や慢性期においては、急性期ほどの顕著な変化が見られない場合がありますが、このようなときは、症状にもよりますが2ヶ月ないし3ヶ月に一度継続的に音声を収録し、時系列で音響分析の結果の差異を観察すると状態の変化がより分かりやすく捉えることができます。
サウンド・スペクトログラムを行なう場合のポイントは、このように2つの時点で比較することです。 特に見慣れていない方は、2種類(2つの時点)のサウンド・スペクトログラムを紙に印刷して見比べてください。いろいろな症状の変化を読み取れると思います。
なお、音響分析を実施するためには、音声収録は、なるべく良い環境で行って頂くのが望ましいですが、言語訓練室や病室で周辺の雑音を遮断しにくい場合は、指向性の高いマイクロフォンを利用されることをお勧めします。
MDや一部のICレコーダで音声収録すると圧縮処理されて収録された音声が音響的にひずんでいますので、音響分析には利用できないので、ご注意ください。 発語内容の記録などにはもちろん利用可能ですが、音響分析することも考えて、なるべくならば、非圧縮の音声データとして保存されることをお勧めします。
(株式会社アルカディア 代表取締役 天白成一)